睡眠時無呼吸外来(SAS外来)

睡眠時無呼吸症候群は英語でSleep Apnea Syndrome といい、頭文字をとってSAS(サス)と呼ばれます。
SASは「10秒以上の無呼吸が一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上生じる場合」と定義され、無呼吸が起きる原因によって次の3つに分類されます。

  • 息を吐くときに肥大した舌や軟口蓋が閉塞するために起きる閉塞型
  • 脳の中の呼吸の司令塔(呼吸中枢)に異常が起きるために起きる中枢型
  • 閉塞型と中枢型が混在する混在型

いびきや無呼吸は寝ている間の出来事なので自分ではわかりません。家族・友人・会社の同僚など「患者さんの寝ている姿を見る事の出来る第三者」から指摘されます。
日本には、中高年の男女を中心に200万人が睡眠時無呼吸症候群だといわれています。ところが、治療を受けているのは約3万人にすぎません。睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、高脂血症、糖尿病など様々な生活習慣病を合併し、寿命に影響します。睡眠中のいびき、無呼吸を人から言われたことのある方はぜひ受診して下さい。

主な症状

  • 大きないびきと呼吸停止(どこかに引っかかるような「カッ!!」「ンガッ!」といういびき)
  • 睡眠中の中途覚醒(ふと目が覚める)
  • 苦しくて目が覚める
  • 夜間頻尿
  • 熟睡感がない
  • 日中の強い眠気、居眠り(交通事故)
  • 疲労感や集中力の低下
  • 頭痛
  • 口や喉が渇く(口臭)
  • 胸焼け、食道胃逆流(逆流性食道炎)

SASの原因

SASの原因は、図3の様に舌の根元、軟口蓋と口蓋垂、上咽頭が睡眠中の筋緊張の低下により一体となり閉塞してしまうことによります。太るとこの部分も狭くなるので、SASが太っている人に多いのも頷けます。
しかし日本人は太っていなくてもSASの患者が多いのも事実です。日本人のSAS患者の特徴として、大きなおなか、小さな顎、短い首、が上げられます。なおかつ舌の位置が高く後方にあり、普通に口を開けて自分でのどの奥が見えないようであればSASを疑います。

SASの検査

SASの重症度は、10秒以上の無呼吸と低呼吸が1時間に何回起きるかで重症度を測る「無呼吸/低呼吸指数」(AHI:Apnea Hypopnea Index)を用います。AHIが5回未満は正常、5回~14回が軽症。15~29回は中等症。30回以上が重症と分類されます。
SASの診断と重症度をみるために、以下の検査を行います。

Epworth sleepiness scale(日中の眠気指数)

昼間の眠気の重症度を示すものとして用いられるのが、Epworth sleepiness scale(日中の眠気指数)です。
以下のa~hの8項目の質問に対して各項目0から3の該当点数の合計点で評価します。

  • a. 座って読書をしているとき
  • b. テレビをみているとき
  • c. 公の場所で何もせずに座っているとき(劇場や会議など)
  • d. 1時間続けて車に乗せてもらっているとき
  • e. 状況が許せば午後横になって休息しているとき
  • f. 座って誰かと話をしているとき
  • g. 昼食後静かに座っているとき(酒は飲まず)
  • h. 運転中渋滞などで2~3分止まっているとき

簡易検査

自宅に持ち帰って簡単に検査できる小型で軽量の機械(アプノモニター、スリープテスター)があります。
アプノモニターでは、呼吸が何秒止まっているか、一晩に何回無呼吸が起きているか、動脈の酸素値がどのくらい下がっているかなどが分かります。

終夜モニター、ポリソムノグラフィー(PSG)

詳しく調べるためには、病院で一晩眠ってもらい、睡眠ポリグラフの検査(ポリソムノグラフィー)をします。これは体にいろいろなセンサーを付けて、顎筋電図、眼球運動、脳波や心電図、胸部・腹部の動き、鼻からの空気の流れ、動脈血の酸素量、いびき、などを記録し総合的に解析するものです。
これで深い睡眠がとれているか、SASであるかの確定診断を行います。 睡眠の深さは脳波を用いて検査します。健康人の睡眠は図17のようにREM睡眠とノンREM睡眠から形成されています。したがって健康な人の睡眠には、ステージ3・4の深いノンレム睡眠が現れます。ちなみに、無呼吸症になると、ステージ1・2の浅い睡眠ばかりになります

SASの治療

持続陽圧換気療法:nasal CPAP
(nasal continuous positive airway pressure; 鼻シーパップ、ネーザルシーパップ)

世界中で使われており、最も効果的で安全な方法です。
鼻にマスクを装着し、圧力をかけた空気を鼻から持続的に上気道に送り込み、上気道を押し広げるというものです。
CPAPは、治療を始めたその日から健常者同様の睡眠がとれる可能性がある治療です。患者さんは、その効果を「朝起きたときの快適さは、いままでになかったこと」「ぐっすりと眠ったことが自分でもわかる」「世界の色合いが変わった」「脳みそを取り替えたみたいに気持ちよい」「楽しい人生が取り戻せる」など、本人にも信じがたいような効果をもたらしていることが、こうした言葉からもわかります。SASが改善されたことで良い睡眠がとれるようになり、脳がしっかり休めるのでいわゆる「五感」が正常に働くようになるためと思われます。

マウスピース

睡眠時にスリープスプリントと呼ばれる医療用マウスピースを装着し、下顎を前方に出すことで気道を確保し、いびきや睡眠時無呼吸症候群を軽減します。この治療法は軽度の症状向けの治療です。

担当医スケジュール

更新日:2023年10月1日

午前   坪井 永保 坪井 永保   坪井 永保  
午後         坪井 永保  

担当医紹介

理事長坪井 永保
専門分野
呼吸器内科
(慢性呼吸器疾患、COPD、呼吸リハビリテーション・運動療法)
出身大学
日本医科大学
認定等
  • 日本内科学会認定医・指導医
  • 日本呼吸器学会専門医・指導医
  • 日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸ケア指導士
  • 日本禁煙学会禁煙専門医・認定指導者
  • Fellow of American College of Chest Physician
  • インフェクションコントロールドクター(ICD)
所属学会等
  • 日本内科学会
  • 日本呼吸器学会
  • 日本呼吸器内視鏡学会
  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会(禁煙推進委員・診療報酬適正化委員)
  • 日本禁煙学会(評議員)
  • 日本肺癌学会
  • 日本感染症学会
  • 福島県医師会(常任理事)
  • 郡山医師会(副会長)
  • 福島県財団法人病院協会(理事)
  • 全日本病院協会(代議員、福島県支部副支部長)
  • 福島県立医科大学医学部客員講師
  • 郡山市国民健康保険運営協議会委員